provoke Jose P Yaponski

provoke

Jose P Yaponski
provoke
みなさん、こんにちわ。わたしはホセですね。

今回は、日本の写真集の金字塔になっている「provoke」を紹介させてもらいますね。

3人の友人たちとわたしが集まってカレーライスを食べながらArt bookを見る会を毎月開催しているんだけど、今回はその友人たちと一緒に本の撮影をしました。わたしがスマホで撮影したのよりもうんと綺麗に撮れているから見やすくなっているよ。

それでは、provokeの1からみていきましょう。
provoke 1
provoke 1
「provoke 1」は1968年に、中平卓馬、高梨豊、多木浩二、岡田隆彦の4人で結成された写真同人季刊誌。

いまでいうzineと同じで、出版社を通さないで作者たちが自分でつくったもの。とても簡素なbook design。副題は"思想のための挑発的資料"。
今からちょうど55年前に出版されました。
1968・夏・1
1968・夏・1
これは多木浩二による写真で「1968・夏・1」というタイトルがついている。

1968年は学生運動真っ盛りの時代。このハットがヘルメットのようにも見えてくる。

海外では、provokeを含めて学生運動のように政治的な反抗活動の写真集を総称して"protest photobook"と呼んでいる。写真集の中でも人気のある一つのジャンルとして確立されているよ。provokeは世界中からprotest photobookの王さまとして評価されている。
多木浩二 1968・夏・1
多木浩二 1968・夏・1
これのように写真の粒子が粗い撮影スタイルは、William Kleinが1956年に出版した名作写真集"NEW YORK LIFE IS GOOD & GOOD FOR YOU IN"が最初だといわれているけど、それをさらに過激にしたのがprovokeのメンバーたちだといわれています。
中平卓馬 1968・夏・3
中平卓馬 1968・夏・3
左のbikini姿の人は中平卓馬の本当のお姉さん。

中平卓馬は最初は写真家ではなく、写真雑誌の編集者だった。左翼系の政治的な雑誌で働いていました。その時も、主にprotestな写真を誌面に載せる編集者だったよ。
中平卓馬・夏・3
中平卓馬・夏・3
余談になるけど、戦後の日本写真集の3種の神器みたいな考え方があります。
影響力、希少性、価値とかいくつかの要素を満たしたものが神器認定されていて、

川田喜久治の「地図」

森山大道の私家版冊子「記録 1〜5」

そして、この「provoke」

これら3冊がだいたい当てはまるのではないかなと思う。

欧米ではこれらのような本物のレアブックのことをHoly Grail(聖杯)と呼んでいるよ。gem(宝石)という言い方もあるけど、gemはもう少し軽い気持ちで親しみやすい本に対して使う表現だよ。
provoke 2
provoke 2
1号のだいたい4ヶ月後、1969年3月に出版されたのがこの2号です。この号から森山大道がメンバーとして参加している。

1号は正方形のかたちだったけど、縦長になった。紙質も少し光沢紙になって趣向が変わってる。
高梨豊
高梨豊
2号のテーマは"エロス"です。

序文にはWilliam Blakeの詩を引用し、いかにもこの時代の左翼らしい小難しく観念的な宣言が挑発的な言葉を尽くして書かれている。
この写真みたいにピントが合っておらず、ブレた写真もprovokeの真骨頂。
さっきのWilliam Kleinも10年以上前にこのスタイルを実践していたけど、欧米の写真ファンの間では、このスタイルがまさに1960年代後半から1970年代の日本写真の代名詞のようになっている。
この写真集には時代の熱気のようなものがしっかりと封印されている。

provokeはこれまで2回復刻されてきました。最初はドイツの出版社Steidlから、2回目は日本の古書店さんから復刻がされました。

特に日本の古書店さんが復刻したものは、本当に素晴らしいクオリティで、紙、印刷、レイアウトほとんど忠実に再現されています。

オリジナル版にはオリジナル版にしかない情報が封じこめられていて、それはproductとしての本のクオリティだけでなく、時代の空気や息吹き、よろこびや哀しみみたいな目にみえないもの。そういう感覚的な情報が、タイムマシンとか玉手箱みたいに、ページを開いた今この瞬間に立ち上がってきたりする。

オリジナル版と復刻版の両方を見比べてみて、そういう時間のメディアとしての本を体験できたときはすごく嬉しくなる。でも、日本の古書店さんの愛のある復刻版の仕事を見た時も同じくらい嬉しくなって、たくさん感謝した。
provoke 3
provoke 3
2号から5ヶ月後、1969年8月に出版された。
同人季刊誌としてのprovokeはこれが最後の号。

個人的にはこの号が1番すきです。
多木浩二
多木浩二
光沢紙ではなくマット紙。印刷はオフセット。これがグラビア印刷だったら、わたしはprovokeのことをもっと好きになっていたと思います。

このページの他にも顔のzoom upのページが続きます。graphicalな写真が大好物です。
高梨豊
高梨豊
この写真は高梨豊の写真集「都市へ」にも掲載されている。ファッションショーの舞台裏かな。
中平卓馬
中平卓馬
これが1番有名な写真かもしれないね。provokeを特集した雑誌のcoverにも使われた。
森山大道
森山大道
この号の森山大道の写真たちはAndy Warholに強い影響を受けて撮影したことがよくわかる。Campbell's Soup Cansみたいに日本のsupermarketで缶をたくさん撮影している。

この後の1971年に森山大道は横尾忠則と一緒に1ヶ月間New Yorkに滞在した。その時の写真集も出版されているよ。
「まずたしからしさの世界をすてろ 写真と言語の思想」 天野道映、岡田隆彦、高梨豊、多木浩二、中平卓馬、森山大道 1970年 田畑書店

これら出版社から正式に刊行されたprovokeメンバーたちによる書籍で、メンバーが雑誌に寄稿した写真論や対談、書き下ろし、少しの写真ページで構成されている。

実質的にprovokeの活動を総括するような内容で、本書をもってprovokeを解体すると名言されています。
出版から55年が経過した今でも、日本にとどまらず、世界の写真家たちに巨大な影響をあたえ続けているprovoke。

いろいろと解説や感想ぽいことを書きましたけど、じつはそんなことはどうでもよくて、問答無用にcoolなphotobook、それがprovokeだぜ、と大きな声で言いたい。

まだprovokeを見たことがないともだちがいたら、是非みてみてね。

今回も長い記事を読んでくれてありがとう。

またね。

Jose
PROFILE
Jose P Yaponski
函館在住の本好き、コーヒー好き、Baby Metal好き、LE SSERAFIM チェウォン好きの趣味人
撮影場所 : Corjica
撮影 : Kousuke nurakami
寝てて参加しなかったmodel : Yayo