これまで、国内外問わず数々のアーティストのポートレートやライブ写真、ディスクジャケットを手がけてきた鈴木啓太。クールななかに遊び心が含有された世界観で人気を博し、幅広い分野の媒体にも携わってきた彼が担当した『NIKE WMNS AIR SUNDER MAX SNDR CANYON GOLD』のCMが7月下旬に公開された。これはその背景の話だ。
役者は揃った。機は熟した
“BACK GROUND” ―これまで―
写真、デザインの仕事に加え、CMなどの映像制作の相談もくるようになった10年前。その頃から[mita sneakes]のPVを手掛けるようになる。クリエイティブディレクターの国井栄之氏は「国井ちゃん」と呼ぶ仲。新しいモデルが出るたびに、手を変え品を変えPVを制作してきた。今回の撮影の経緯として、間違いなく[mita sneakes]で10数年続けさせてもらって培った撮影技術と多くの作品が残せていたことが大きい。国井栄之氏に限らず、仕事を依頼してくれる周りの人たちはいつも自分を成長させてくれた。
“CONNECTION” ―縁―
息子の小学校のクラスメイトに、サッカークラブも一緒で、家も近所の友達がいる。その子のお父さんが偶然にもNIKEで働いていた。今回の企画は、このお父さんの存在がなければ実現はありえなかった。子ども同士仲が良いこともあり、家族ぐるみで遊ぶことも増えた。そんななか、スニーカーの話をすることも。「そういえば……」と思い、とある施設で考えついた映像のアイデアを切り出して、 「ある空間に300足のスニーカーを入れて浮かしたいんだけど、そんなことできたりするかな?」 と相談してみた。すると 「凄い良い!企画に合うモデルが出たらすぐにでも!300足も全然用意できますよ。」 と、即答。そうこうしているうちに、99年にリリースされた「SUNDER MAX」の復刻の話が。すぐに施設の担当の方にも連絡し、定休日に場所を貸してもらえることになった。
“CREW” ―制作チーム―
とはいえ「SUNDER MAX」リリースまでほとんど時間がない。すぐに、“鈴木組”(普段は各々で仕事しているが、彼の呼びかけによって集まる撮影クルー )と、技術さん、照明さんのスケジュールを確認。奇跡的に、施設の定休日に合わせてピンポイントの調整が出来た。 またPVのサウンドに関しては、これまで自分が制作してきた作品で何度も担当してくれていたサウンドプロデューサーのFKDに一任することに。いつもは「四つ打ちで」とか「ミニマムな感じで」とかイメージを伝えさせてもらってるのだが、今回は彼の思いつくままにやってもらった。当日の撮影に入ってくれた “鈴木組”含め、普段から一緒に仕事してる人たちと制作に臨めたことも大きい。関わってもらった誰かのうち、一人でも欠けていれば今回の動画は成立しなかっただろう。
PROFILE 鈴木啓太 | Keita Suzuki さまざまな雑誌やWeb媒体、カタログでのフォトグラファーとして活躍する一方で、国内外問わず多くのアーティストのポートレイト、ライブ写真も手掛ける。デザイナー/アートディレクターとして活動するなかで、デザインイメージに適した素材を撮影する為、写真を始める。写真のノウハウを教えてくれた故師匠との別れを機にスタジオマンを経験した後、フォトグラファーとして独立。多くのライブ撮影やディレクションをきっかけに、『Wax Poetics JAPAN』の専属フォトグラファーを務め、多くのミュージシャンのポートレイトやライブ撮影を手がけてきた。現在は、これまでのデザイナーやアートディレクターとしての経験を活かし、ファッション、レコードレーベル、広告など幅広い分野で活躍中。写真、動画、グラフィックなどの技法を多面的に活用しながら前衛的な発想のもと生み出される作品は、感情的なインパクトを与える。
Direction & Interview : GOOD ERROR TEAM Text : Seiji Horiguchi